yumomomo連載コラム「カラーで生きる」 第6回「ホテルの白いシーツ」

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 日用雑貨クリエーターのyumomomoさんによる連載コラム「カラーで生きる」。本連載ではyumomomoさんが独自の視点で様々な色について描き、毎週金曜日にお届けします。第6回は「ホテルの白いシーツ」――

第6回 「ホテルの白いシーツ」

   白いぱりっとしたシーツにもぐりこむと、生まれ変われるような気がした。

 わたしは以前、風俗嬢をしていた。というか、風俗以外にまっとうに勤め上げた仕事がわたしにはない。十九からこの世界に入って、二年前までずっと風俗で働いていた。
 想像できる人にはわかるだろうが、風俗の仕事はものすごく疲れるものだった。でもわたしはその仕事が大好きだった。当時は恋人もいないし友だちもいなかったので自分の時間は自分だけのものだった。その反面、仕事中はお客さんのためだけに存分に使うことができた。
自分へのごほうび、ねぎらいとして、一か月に一度、または一か月半に一度だったりもしたが、休日にビジネスホテルに泊ることにしていた。泊って何をするというのではない、ただ自分の部屋以外ですごす時間を自分に作ってあげたかったのだ。その時間は誰にも邪魔されないわたしだけものだった。完全にわたし一人だけの時間。いつも見上げる自分の部屋の天井ではない、知らない天井。そしてぱりっとしたベッドのシーツはわたしの疲れをいやしてくれた。
ホテルのシーツって、なんて白いんだろう。なんて、こんなにぱりっとしているんだろう。
ホテルというのは、人の住まいにするにはきれいすぎる。ここは時たま休むのに向いている。
そんな白いぱりっとしたシーツには現実味がない。そこでは自分は自分でなくなるような気がした。誰のものでもない、自分が、自分のものでもない。それがとても心地よかった。

 ホテルのラウンジで本を読みながら少しお酒を飲んで、部屋に帰る。そしてシャワーを浴びローブに着がえて今日のシーツにすべりこむ。ふだんのわたしはどんな顔をしながら仕事をしているんだろう。そんなことを考えながら、部屋にデリヘルでも呼んだらどうかな、そもそも女がふつうのデリヘルって利用できるのかな、などと思案しているうちに眠りにつく。
 朝、ふだんなら絶対に目覚めない時間にすっきりと目が覚めて、でもお酒を飲みすぎた日なんかは体が少し重くて、においに誘われてラウンジに降りてモーニングを食べる。泊るホテルはだいたい決めていて、モーニングに出すパンを自家製で焼いているホテルを選ぶ。そうすると、パンを焼くにおいで目が覚める。ちょっと、おしゃれだ。そんな自分をぜいたくだなあと体の軽さに酔いながら、着がえて、チェックアウトする。

 そしてまた、わたしはわたしに戻る。

yumomomo(日用雑貨クリエーター)

【お知らせ】
本コラムの筆者であるyumomomoさんが、先日、自身の作品を展示・販売するネットショップ「MIDORI」をオープンしました。コラムとあわせてご覧ください。
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文責は日本語のみ