連載コラム「カラーで生きる」 第12回「肌色」

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 日用雑貨クリエーターのyumomomoさんによる連載コラム「カラーで生きる」。本連載ではyumomomoさんが独自の視点で様々な色について描き、毎週金曜日にお届けします。第12回は「肌色」――

第12回 「肌色」

 姪っ子が生まれたのはたしか十年くらい前のころだった。わたしは兄が大好きなので、兄が幸せになることはとても嬉しかった。お嫁さんも美人で優しくていい人を見つけたし。(これで美人でなく性格も悪かったら、お兄ちゃんをとった女、としか思わなかったと思うけれど)
 義姉が出産してから、何日か後にわたしははじめて姪っ子に会いに行った。義姉はなんだかとても神々しくて美しく、まぶしいくらいだった。ああこの人がお兄ちゃんのお嫁さんでよかった、と思った。お兄ちゃんを幸せにしてやってください。きっと幸せにしてください。そう思った。
 はじめて姪っ子を抱いたとき、ずっしり重くてあたたかいことにびっくりした。あたたかいというか、熱かった。命なんだ、と思った。泣けてきて、本当に生まれてきてくれてよかったね、ありがとう、と思った記憶がある。
 赤ん坊の肌の色は、いちばんピュアな肌色だ。
 わたしの母は、わたしの出産のときに、出血多量で死にかけたそうだ。ことあるごとにそれを言ってくるのでうるさいなといつの間にか思うようになってしまった。姪っ子を抱いたわたしは、わたしにもこんな時があったんだ、と苦々しい思いを抱いた。わたしはこの世に生まれたくなかった。誰も、この世に「生まれてきたい」と思って生まれてくる人はいない。なんだか知らないけど生まれた、それだけなのだ。生きているうちに生きる意味や生きたいという気持ちが生まれてきて、生まれてきてよかった、と思えるようになる。生まれなければよかった、とも思えるようになる。自由に。
 そんなふうに思うころの肌色は、赤ん坊時分のピュアでまっさらな肌色とはちがって、幾重に何色にも染められている。そう、わたしたちの肌の色は、いわゆる「肌色」ではないのだとわたしは思う。いろんな色が重なって、今の肌の色が出来上がったのだ。
 わたしはわたしの肌の色が好きだ。あたたかいところでは、血行がよくなって少し赤みがかかる。寒いところにいたり体調が悪くなれば青白くなる。汗もかく。乾燥してかさかさになったり、お風呂に入ってしっとりしたり。傷痕もある。わたしがつけたわたしの傷痕だ。傷痕は他の箇所よりも少し盛り上がって色が濃い。わたしはこの手首の傷痕も大事にしている。まごうことなきわたしが苦しんできた跡だから。悲しかった。苦しかった。気が狂いそうな孤独がつけた傷。家族のできた今のわたしにとってそれはここまでの遠い長い道のりであり、生きてきた証だ。苦しんでつらかった自分がいなければ、今のわたしは存在しない。
 わたしは姪っ子のことが大好きだ。姪っ子が生まれてから兄への距離が遠く感じられて兄に会いにいくのが照れくさくなって、足を運ぶのが遠慮がちになってしまったけれど。
 いつか、姪っ子がもっと成長して、いろんな「肌色」を身につけることをわたしは楽しみにしている。なかなか会いにいけないけどさ。

yumomomo(日用雑貨クリエーター)

【お知らせ】
本コラムの筆者であるyumomomoさんが、先日、自身の作品を展示・販売するネットショップ「MIDORI」をオープンしました。コラムとあわせてご覧ください。
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