連載コラム「カラーで生きる」 第13回「オリーブグリーンとウグイスな彼」

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 日用雑貨クリエーターのyumomomoさんによる連載コラム「カラーで生きる」。本連載ではyumomomoさんが独自の視点で様々な色について描き、毎週金曜日にお届けします。第13回は「オリーブグリーンとウグイスな彼」――

第13回 「オリーブグリーンとウグイスな彼」

 オリーブが好きだ。あのころころしたかわいさといい、色といい、わたしを優雅で落ち着いた気持ちにさせてくれる。
 小さいころは、両親も祖父母もオリーブオイルは体によくないと言っていた。でもそれはたぶん、「未知なもの、生活圏外にあるもの」に対する畏怖でしかなかったのだろうけれど。オリーブオイルが体に悪いわけがない。オリーブの果実の果汁から作られるのだから。
 「オリーブ」とはよく聞くけれど果実なんだというあたりまえのようなことを、わたしは友だちに教えてもらった。その友だちは抜けたところがあるけれど博識だ。料理にもサラダ油はいっさい使わないでオリーブオイルを使う。サラダのドレッシングがない時には、オリーブオイルを使って、ちゃちゃっとおいしいフレッシュなドレッシングを作ってくれる。ドレッシングを「ドレス」の進行形(つまり、dress+ing)なのだと教えてくれたのも彼だ。食べ物に「纏わせる」という意味なんだよ、と。
 わたしはオリーブが好きだ。小洒落たバーで出てくるオリーブの酢漬けも、オリーブオイルも好きだ。オリーブオイルの瓶もなんかかっこよくて好きだし、ドライマティーニに入っているアイツもステキだ。でも手を加えていない生のオリーブにはお目にかかったことがない。相当固いのだという。
 さきほど、その友だちの男の子と喧嘩してしまった。二人して陰険な空気を出してとても居心地が悪く、くさくさ心が痛かった。おさななじみでくされ縁で、かけがえのないとても大事な友だちだ。昼間から盛り上がって一緒に飲んでいた酒がまずくなり、それでお互いちょっといじけた。
 昼間でもお酒を飲んでいてもはずかしくならない、そんないつもの気楽なカフェバーでわれわれは飲んでいて、めずらしく喧嘩になってわたしは先にその店を出た。白山駅までの道を歩くと、浅く茂った植物園のわきを通ることになる。どこからともなく、ホーホケキョ、の声が聞こえた。ウグイスだ。姿は見えないが植物園の花の蜜を吸いに来たのだろう。ウグイス色は、オリーブ色に非常によく似ている。わたしは木の枝にオリーブによく似たウグイスがちょんととまっているのを想像した。ねえ見てごらん、と右を振り向いて言いそうになって、ああそうか、はあっ、とため息をついた。彼とはそんなことを一緒になって楽しめる間柄だったのだ。
 ギリシャ神話では知恵の女神アテナが創ったとされ、キリスト教聖書ではノアの方舟から放たれたハトがオリーブの葉をくわえて戻ったことによって洪水が終り陸地があらわれたことをノアにしらせたという。オリーブは平和と和解の象徴とされている。
 そんなオリーブの生の果実にいつかわたしは会ってみたいと思う。彼とはそのうち何もなかったかのように仲直りするだろう。そんな仲なのだ。

yumomomo(日用雑貨クリエーター)

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本コラムの筆者であるyumomomoさんが、先日、自身の作品を展示・販売するネットショップ「MIDORI」をオープンしました。コラムとあわせてご覧ください。
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