
8月5日に開幕するリオデジャネイロ五輪。日本でもジカ熱や治安問題といった不安要素ばかりが取り沙汰され、これまでの五輪と比べて盛り上がりに欠けるのは否めないが、選手団が現地入りするにつれ現地の様子が報じられるようになり、ようやく開幕ムードが高まってきた。
2012年に開催されたロンドン大会では開会式だけで世界約9億人が視聴したと言われるオリンピック。
本サイトでは、長年に渡りオリンピックやワールドカップ等でのテレビ中継システムの構築を担い、今大会も現地と日本の視聴者の懸け橋となる株式会社メディアプロデュースジャパンの伊藤清氏による、リオ五輪の開幕を控えた現在から閉幕後まで最前線の情報を伝える「伊藤清のブラジルレポート」をシリーズ配信する。
オリンピック開幕直前のリオデジャネイロから届ける「伊藤清のブラジルレポート」。第3回は「8月2日の出来事」――
「伊藤清のブラジルレポート」第3回 8月2日の出来事
8月2日、近くのスーパーマーケットに買い物に行った帰り道、公園の中の遊歩道を大量のレジ袋を下げて歩いていたら、背後から話しかけられた。
「コンニチハ、ニモツオモイデスカ?」
あっ日本語だ!と気付き、振り返ったら、50代ぐらいのブラジル人のご夫婦が犬の散歩をしていた。「ワタシノナマエハ、エミリオデス」と旦那さん。
日本語を話せるんですか?と応じると「私は4年間、秋田にいました」とのこと。聞けば、エミリオさんは1995年から1998年まで秋田商業高校でサッカーのコーチをしていたという。
そうなんですか?秋田は雪がすごかったんじゃないですか?と尋ねてみると「冬はとてもとても寒かったけれど、日本の人たちは暖かくて、私たちに本当に親切にしてくれた」と、しみじみと懐かしむように答えてくれた。
「日本人のコーチがブラジルで柔道を教えるようになってから、ブラジル柔道のレベルがとてもとても高くなったね。私はサッカーしかできないから、サッカーで恩返しが出来たなら嬉しい」と語るエミリオさん。スポーツで人と人がつながり、人とスポーツのレベルが一緒に成長することが現実にある。その過程では、人種や言葉の壁はもはや存在しない。きっと当時教わったの選手たちも貴重な体験として、いつまでも記憶に残っていることだろう。
現在、エミリオさんは地元のテレビ局でサッカーの解説者をしていて、今回のオリンピックの試合でも解説をするそうだ。
お互いが「きっと、またどこかで会うでしょうね!チャオ!」と言って別れた。
今のリオの状況はというと、マスコミが揃って伝えるように、ロンドンや北京と比べ、会場整備の遅れや、治安に対する不安があるのは事実だ。市民のオリンピックに対する関心が欠けている事も否めなく、開会式のチケットもかなり余っているという。自国開催であるにもかかわらず、大統領が開会式の欠席を余儀なくされている状況も普通ではない。
しかしそれを非難しても、嘆いてみても仕方がない。たとえ大統領や新東京都知事が開会式に出席しなくても、オリンピックに出たいと望む人と、それを見たいと思う人がいる限り、オリンピックは開催されるべきで、メディアにはそれを伝える使命がある。さっき出会ったエミリオさんもきっと、同じ気持ちに違いない。
夕暮れを過ぎてもなお公園では、少年たちがボール蹴りに興じ、ジョギングやサイクリングなど、体を動かすことを愉しんでいる人の姿がたくさん見える。この公園にいる人たち、全てのリオ市民、そして全てのブラジル国民が、カナリア色のセレソンなのである。
まもなく、リオデジャネイロオリンピックが始まる。次回は開会式の模様をいち早く、LIVEでお伝えします!
Ate logo!
(伊藤清)
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