2026年1月10日、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて、人気アニメシリーズ『秘密結社 鷹の爪』の20周年を記念するイベント『20周年だよ団員集合! ギヒルズ実験劇場~AIインタラクティブMOVIE上映会~』が開催された。2006年の誕生から2026~2027年をアニバーサリーイヤーと位置づける同シリーズにとって、本イベントはその幕開けを飾る重要なキックオフとなる。
今回、本サイト記者が現地で取材。会場には抽選で選ばれた観客や関係者ら約400名が詰めかけ、立ち見が出るほどの盛況だった。披露されたのは、従来の映画鑑賞の概念を拡張し、観客がリアルタイムで物語に関与する「AIインタラクティブ映画」という新しい映像体験だ。
観客の「顔」と「声」が劇中に登場。AIによるリアルタイム生成技術
本イベントの核心は、株式会社AI VOLTと共同開発したAI映像制作システム「HAIRICOM(ハイリコム)」の実装にある。これは、劇場内でスマートフォンを介して観客が参加するという、試験的な試みだ。
今作では、事前登録された顔写真からその場で「鷹の爪風」のアニメキャラクターを生成する映像技術に加え、事前に収録した観客の音声をもとにセリフをリアルタイムで構築する音声生成技術を活用。
さらに、簡単な質問への回答をAIが解析し、各個人のパーソナリティを反映した独自の会話劇を展開することで、ランダムに選ばれた観客のアバターが本編に登場し、キャラクターの一人として総統や吉田くんと掛け合いを行うという、その上映回限りの物語が生成される仕組みだ。
これにより、ランダムに選ばれた観客のアバターが本編に登場し、キャラクターの一人として総統や吉田くんとのリアルな掛け合いが実現。単なる合成画像ではなく、声や性格設定までをもAIが処理し、その上映回限りの物語を生成する点が技術的な特徴となっていた。

「バジェットゲージ」の進化。投げ銭によるシナリオ分岐
同シリーズ独自のシステムである「バジェットゲージ(予算残量表示)」も、AIとの連携によって進化を遂げている。観客がアプリ上で付与されたポイントを「投げ銭」のように投入することで、ゲージがリアルタイムに変動する。
ポイントの蓄積量に応じて、映画内の演出が豪華になる、あるいはシナリオやエンドロールの表記が変化するなど、観客の行動が直接的に作品の結末や視覚効果に影響を与える仕組みだ。これは、受動的な「鑑賞」から、能動的な「参加・共創」へと映画の定義を広げる実証実験としての側面を併せ持っている。
2027年に「最後の映画」制作へ。20周年が示す次なる一手
イベント後半のトークショーでは、監督・FROGMAN氏より、2027年に「秘密結社 鷹の爪」としての最後の映画を制作する旨が発表された。20周年という節目において、これまでの実績を維持するだけでなく、AIという新たなテクノロジーを積極的に取り入れる姿勢は、常に既存の枠組みを壊してきた同シリーズらしい選択と言える。
会場では過去の「ポイポン」回など、ファンには馴染み深い要素の展示も行われ、歴史を振り返りつつ未来の可能性を提示する構成となっていた。出席率が9割を超えるなど、業界内からも高い関心を集めた本イベントは、AIとエンターテインメントの融合における一つのマイルストーンとなったと言えるだろう。