2025年12月に掲載した2026年の市場展望です。2026年10月27日、値下がりの可能性を否定する記述、海外資金の動機の一般化、無理な借り入れを促す結論を修正しました。以下は価格の将来予測を保証するものではありません。
東京の住宅価格を考えるとき、建設費、金利、購入者の所得、国内外の資金という要因を一つにまとめて「上がる」「下がる」と判断すると、物件ごとの差を見落とす。2026年を展望する本稿では、供給費用が価格を支える可能性と、需要が弱まる場合の調整圧力を分けて考える。
建設費の上昇は、販売価格の下限を保証しない
資材、人件費、用地の取得などにかかる費用が増えれば、新規事業で採算を確保するために必要な売価も上がる。事業者が着工や販売の時期を見直し、供給を抑える可能性はある。ただし、コストが増えた分を、そのまま購入者へ転嫁できるとは限らない。
ここで、原価の上昇をまとめて「サンクコスト」と呼ぶのは適切ではない。サンクコストは、既に支出し回収できない費用を指す。将来の建設費や調達費用とは区別する必要がある。過去にいくら投じたかだけで、現在の市場価格が決まるわけではない。
販売が長引けば、金利、保有費用、資金繰り、次の事業への投資余力も判断に影響する。財務状況は会社ごとに異なり、大手であっても値下げや資産売却の圧力がなくなるわけではない。
海外資金は一方向に動くとは限らない
外国の購入者から見た価格には為替が影響する。資産の分散や長期保有を目的とする需要がある可能性は考えられるが、国籍だけから全員の投資目的や売却方針を決めつけることはできない。為替、現地の資金需要、金融規制、税制や地政学上の変化によって、売買の判断は変わり得る。
特定の国から資金が流入し続ける、都心なら必ず海外の買い手が付く、と結論づけるには、取引額や購入者の属性などの裏付けが必要だ。本稿は、そうした継続的な流入を確認した統計に基づく予測ではない。
金利と所得が変われば、購入できる価格も変わる
同じ借入額でも、適用金利が上がれば返済負担は増える。所得が増えない中で購入費用が膨らめば、買い手が予算を下げたり、購入を見送ったりする可能性がある。供給費用が高いことと、需要がその価格を受け入れ続けることは別の問題だ。
都心・郊外という区分だけでも十分ではない。駅からの距離、築年数、管理状態、面積、修繕費、周辺の供給などによって、価格や売りやすさは異なる。平均価格の動きだけで、個別の物件を評価しないことが必要になる。
保有を続けられる条件から購入を考える
価格を支える要因が続く場合だけでなく、金利上昇、景気の後退、融資条件の厳格化、供給の増加などが重なる場合も考えたい。売却価格が購入額を下回る可能性や、希望する時期・価格で売れない可能性は、立地の良い物件にもある。
「無理をしてでも一等地を買う」という二者択一は適切ではない。自己資金、返済の余裕、生活費、修繕費、保有期間、収入が減った場合の対応を確かめ、購入・賃貸・購入延期を比較する。流動性は重要な観点だが、高額な物件を買うだけで確保されるものではない。
2026年の市場を一つの結末で語るより、どの条件が変わると自分の判断も変わるのかを明確にする。その方が、予測が外れたときにも対応しやすい。
(松島剛)