南国の楽園・ハワイの魅力について、日本ハワイアンビューティ協会がお届けする連載コラム「ハワイアンビューティのすすめ」。第6回は日本ハワイアンビューティ協会代表理事・しらいあきらさんによる「クリバン・キャット」について――
ハワイに住む猫
知ってますか?ハワイには、とぼけた猫が住んでいることを。名前はクリバン・キャット(Kliban Cat)。と言っても、本物の猫ではありません。
ワイキキの街やアラモアナS.C.でも見かけるCrazy Shirtsという、主にTシャツを扱うお店を入ると、この猫に会うことができます。
私がこの猫に出会ったのは、かれこれ20年ほど前。私は、犬と猫とどちらが好きかと聞かれたら、断然、犬と答える犬派なのですが(あ、もちろん猫も可愛いと思いますよ。)、ハワイで出会ったこの猫には一目惚れ。たちまち大ファンになってしまいました。ハワイに行くたびに店に立ち寄り、自分用友人用にとお土産にこの猫のTシャツを買っていました。ところが、一時期、この猫はハワイの街から姿を消してしまい、私は、ほんとに寂しい、ちょっとしたペットロス状態になってしまっていたのでした。
クリバン・キャットが姿を消した理由
嬉しい事に、数年前からまた姿を見られるようになって、ハワイを訪れる楽しみをひとつ取り戻すことができたのですが、彼(たぶんオス)が、なぜ姿をくらませていたのかの理由を知りたくなり、調べてみました。彼は、1900年代後半に雑誌『PLAYBOY』などで活躍したイラストレーター、バーナード・クリバン氏(Bernard. Kliban、1935-1990)の作品で、つまり生まれはハワイではなく、アメリカの都会猫。1975年に絵本として出版され、ユーモアとウィットにあふれるこの猫のイラストは多くの人々に愛され、たちまちベストセラーとなりました。
一方、Crazy Shirtsは1964年にワイキキで創業された老舗Tシャツブランド。1977年からライセンス契約によりクリバン・キャットをキャラクターとして使用し、急成長を遂げました。以来、この猫はハワイのお土産Tシャツの定番ともなり、“ハワイの猫”として親しまれるようになったのです。Crazy Shirtsは、一時は全米で70店舗も展開、しかしバーナード・クリバン氏の死後、遺族との間でライセンス契約の訴訟が起こり、猫の絵は使えなくなってしまいました。ハワイの街からクリバン・キャットが姿を消したのには、そんな訳があったのですね。
愛らしい猫の絵柄を失ったCrazy Shirtsは、その後、経営が悪化。2001年に倒産し、新しい投資家と経営者が経営再建に取り組みました。そして、ファンの要望に答えて、数年前に、再びライセンス契約を結ぶことに成功し、クリバン・キャットがハワイの街に帰ってくることができたのです。
ハワイの懐の深さを感じさせてくれる
さて、クリバン・キャットはハワイ生まれではないことには触れましたが、この猫は様々なスポーツをしたり、料理をしたりと、様々な表情(シーン)で私たちを楽しませてくれます。ハワイ“専属”ではないのでハワイとは関係のないこともしているわけですが、私はやはり、ハワイに関する絵柄が、この猫にはとてもマッチしていると思います。サーフィンをしたり、シェーブアイスを作ったり、ワイキキトロリーに乗ったり…。クリバン。キャットのおおらかさやイタズラ心、ちょっとマヌケなところ、つまり自由に生きている姿を、ハワイの風景やアイテムが優しく包み、許してくれる…。クリバン・キャットは、ハワイのそんな懐の深さを表現しているように感じられます。そして、私をはじめとする「ハワイで、のほほんと暮らしたい」という怠け心いっぱいの人間の憧れの存在でもあるからこそ、“ハワイの猫”の地位を維持し続けているのかもしれません。