【書評】激烈な人生を送った“慈善活動家”がたどり着いたコミュニケーションの真髄(山崎祥之)

【書評】『ONE~1つになるということ』(著・加藤秀視/徳間書店)

「伝え方」より「つながり方」 激烈な人生を送った“慈善活動家”がたどり着いたコミュニケーションの真髄(山崎祥之)

人の悩みの大半は人間関係。書店に足を踏み入れると、伝え方やコミュニケーションの書籍が溢れてかえっています。“伝わらない”のは努力が足りないだと、片っぱしから読む人も多いのでしょう。そんな中「伝え方を学ぶのはムダ」と言い切る異色の一冊が注目されています。

『ONE~1つになるということ』が掲げるのは、「伝え方」より「つながり方」。著者の加藤秀視氏は、被災地支援や少年更生の実績が評価され、ノーベル賞に4回ノミネートされた社会起業家ヤンク・バリー氏が主宰、ビル・クリントン、マイケル・ジョーダンも名を連ねる「グローバル・ビレッジ・チャンピオンズ財団」の日本人初のメンバーでもあります。彼の肩書は慈善事業家。実はそこに至るまでの物語自体が本書のエッセンスになっています。

“与える”“本気で向き合う”からすべてははじまる

著者の逮捕シーンから始まる本書。裏切り、仲間の死、絶望を皮切りに、裏社会の10年間で身に刻まれた人間関係の原理、信頼構築のための絶対的要素は損得を無視して”与える”ことであり、それは表も裏も関係のないという気づきを得たと言います。「人はいつでも変われる」。そんな想いで、どん底の半生を包み隠さず話すうちに、現在は講演で年間1万人以上を動員。無名のアスリートを世界大会金メダリストに導き、中小企業を100億円企業に育てるなど、人の能力を引き出すメンターとしても活躍。その源泉は1000人以上の非行少年少女の更生の経験から得た哲学にあるといいます。“どんな子供も、相手が本気で理解する気があるかを言葉ではなく、体で感じとっている”。言葉頼りの本質的なコミュニケーションの希薄さが横行していることへの危機感も本書が生まれた動機になっています。

”何かが違う”から導き出された「つながる」ことの大切さ

表社会に転じた時、学びを得ようと数千万円を投じセミナーに参加。そこで見たものは魅力のない講師と、講師に依存し何度も同じセミナーに通う人々への違和感。そして、ここまでしてなぜ”人は変わらないのか”への疑問でした。

セミナーで繰り返される「行動を変えよう」「考え方を変えよう」に、人が反応できない理由。それはアプローチすべき意識レベルを間違えているところにあると指摘します。つまり変わることを阻む「怖れ」や「思い込み」は、表層的な意識レベルでの対処では振り払うことができず、結果、自分が思い描く人生を生きることができないのです。本来、人間は言語を持たない時代から「つながる技術」を持ち、真の人間関係に言葉は不要、人間関係を制するのは“一つになる技術”だと言い切る本書。命がけの人生から紡がれた真理だけに、昨今、問題になっている自己啓発書の海に溺れかけている人々の羅針盤足りうる一冊かもしれません。
(文・山崎祥之)

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