老舗銭湯にゴジラを描く――女性銭湯絵師・田中みずきさんに聞く「ゴジラと銭湯」

 映画「シン・ゴジラ」の公開を控え、東京都大田区の老舗銭湯「大田黒湯温泉 第二日の出湯」の浴室に、睨みを利かせたゴジラの銭湯絵が描かれた。
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 大田区の景色とゴジラが楽しめるというユニークな趣向の銭湯絵。今回、ゴジラの銭湯絵を手がけたのは、日本で3人しかいない銭湯絵師のなか唯一の女性絵師である田中みずきさんだ。「大田黒湯温泉 第二日の出湯」を取材し、田中さんに銭湯絵について話を伺った。 (聞き手・工藤州太)

銭湯絵師・田中みずきさん

銭湯絵師・田中みずきさん

――今回の依頼があったとき、どのように思いましたか?

田中さん「最初、お話をいただいた時はビックリしましたが、日頃からお世話になっている蒲田の第二日の出湯さんに、小さい頃から馴染みのあるゴジラを、大好きな作品の多い庵野監督の最新作の公開に際して描くという事で、断る理由は見当たりませんでした。映画を観て銭湯に入りに来たお客さんには、銭湯絵のゴジラを見て映画のことを思い出してほしいですし、そうでない方も『シン・ゴジラ』に興味を持っていただけたら嬉しいですね。あと、この絵をきっかけに、絵の中に描いてある大田区の名所に立ち寄って楽しんでもらえればと思います」

――普段描かれている銭湯絵とは異なる、特殊なテーマだと思いますが、どのような工夫をされましたか?

田中さん「大変だったのは、親しみやすいゴジラを描くことでした。実際より『怖い』というイメージは抑えて描いたので、どれくらいの怖さを出せばゴジラっぽさが出せるか、調整が難しかったです。下から見上げた時のゴジラの壮大なイメージも大事だと思ったので、何度も見え方を確認しました」

2014年、第二日の出湯(大田区)に田中さんが描いた銭湯絵

2014年11月、第二日の出湯(大田区)に田中さんが描いた銭湯絵

2015年、第二寿湯(江戸川区)に田中さんが描いた銭湯絵

2015年、田中さんが第二寿湯(江戸川区)に描いた銭湯絵

はすぬま温泉(大田区)のシャッターに描かれた田中さんの絵

はすぬま温泉(大田区)のシャッターに描かれた田中さんの絵

――近年、銭湯の数が激減しています。銭湯絵師も田中さんを含めて日本に3人しかいないそうですが、現状をどのようにお考えでしょうか?

田中さん「大田区は銭湯が23区の中でも1番多い地域なんですが、それでも年々その数は減ってきているんですよ。経営者さん達の高齢化が進んでいたり、お客様の数も減っているというのが現状です。受け継いだ伝統の型は守りつつ、新しい取り組みが大切だと思います。これからも銭湯は、時代のニーズに合わせていけば、ずっと引き継がれていくのではないでしょうか」

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 今回、田中さんが手がけた作品は、大田区の名所が広がるなか、その中央にゴジラが現れたという構図。

 向かって右の湯には、富士山と多摩川、羽田空港が描かれていて、左の湯には池上本門寺、東急プラザの観覧車、アーケード街であるサンライズ蒲田が描かれている。男湯と女湯が半月で入れ替わるようになっているので、どちら側からも堪能することができる。

 伝統を守りながら、現代の銭湯絵を追求する田中さん。銭湯文化と銭湯絵のこれからに注目したい。

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