「障害者雇用率2.45%」を達成――協和キリングループの実践する「働きやすさ改革」とは

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国内企業で活発化する「障害者雇用」の取り組み

政府主導の「働き方改革」で多様な働き方が促進される現在、「障害者雇用」を巡る国内企業の取り組みが活発化している。

日本においても世界的潮流である「インクルージョン(障害者を含む多様な人材の社会的包摂)」「ノーマライゼーション(障害者が他の一般市民と同様に社会に参画できること」の理念が徐々に浸透し始めているなか、厚生労働省による「平成29年障害者雇用状況の集計結果」によると、50人以上規模の民間企業において雇用されている障害者数は前年より4.5%増加し、過去最高となる約49.6万人。

2018年4月には障害者雇用促進法が改正され、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わると同時に、民間企業における障害者の法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられた。さらに2021年3月末までに2.3%までの引き上げが予定されている。

多くの企業が対応しきれていない実態も

こうした動きの一方で、障害者雇用に対応できている企業は一部にとどまっているのが現状だ。

出典:エン・ジャパン 人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』アンケート
出典:エン・ジャパン 人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』アンケート

エン・ジャパンが2018年10月に発表した調査結果によると2.2%の法定雇用率を達成できている企業は39%。法定雇用率が2.0%だった前年より18%減少していることから、わずか0.2%のアップでも企業にとって対応しきれていない実態が浮き彫りとなった。

各企業が「周囲の社員による障害への理解」や「適した業務内容」「安全面の配慮」など障害者を受け入れる体制に頭を悩ませているなか、先進的な障害者雇用を行っているのが、医療用医薬品の製造・販売で知られる協和キリングループ(※前・協和発酵キリングループ)だ。

障害者雇用で一歩先を行く「協和キリングループ」

出典:採用情報サイト|協和キリン株式会社
協和キリン株式会社HP 採用情報ページより

同グループでは2013年1月に「協和発酵キリングループ障害者雇用推進宣言」を制定。2016年からは「障害者相談窓口」を設置し、職場での「障害を理由とする差別の解消」や「合理的配慮の提供」を実践する体制を整えている。

2018年6月1日現在、障害を持つ143名の従業員を雇用し、法定雇用率2.2%を上回る2.45%の障害者雇用率を達成している同グループだが、障害者雇用で一歩先を行く背景にはテクノロジーを積極活用した「働きやすさ改革」と言うべき取り組みがあった。

画面読み上げソフトは「視覚に障害を持つ社員の『業務遂行上、最低限必要なツール』」


「視覚障害者の社員を雇用し始めた当時から、視覚に障害を持つ社員にとっての『業務遂行上、最低限必要なツール』として『スクリーンリーダ(画面読み上げソフト)』を導入・使用しています」
と語るのは同グループの人事部で多様性推進を担当する武藤裕美子さん。

同グループで導入している画面読み上げソフトは「PC-Talker」と「JAWS」。

「こちらのソフト使用時のPC画面は、他の社員のPC使用時と変わりなく、ソフトが画面上のテキストを読み上げて、該当社員がイヤホンをつけて情報を聞き取るだけなんです」
(武藤さん)

これらの画面読み上げソフトは、画像データ以外であれば簡単な表を含め文字データをすべて音声に変換してくれるため、視覚障害者が仕事を行っていく上では大きな助けとなっている。

聴覚障害者をサポートする「音声認識システム」

同グループでは聴覚障害者の仕事をサポートする「音声認識システム」も積極活用している。

「UDトーク」の活用シーン
「UDトーク」の活用シーン

「弊社は『UDトーク』という音声認識システムを導入しており、特に複数名が参加する会議で、このシステムを活用しています。参加者の発言がタイムリーに文字化されるので、議論の内容をすみやかに理解することができるんですよ」と武藤さん。

「聴覚障害があっても自分の意見を文字入力することで参加者全員に伝えることができ、双方向のコミュニケーションが可能になることで大変役立っています。質疑応答や協議事項の決定などに積極的に参画できるので、仕事の面白さ、やりがいにつながっています」と「音声認識システム」活用のメリットを語る。

トークの内容がPCにリアルタイムで表示される
トークの内容がPCにリアルタイムで表示される

「UDトーク」で職場全体の業務効率化や生産性向上に期待

同グループが「UDトーク」を導入したのは2017年7月。

武藤さんは「聴覚障害のある社員は、手話通訳の入らない業務会議や打ち合わせで、リアルタイムに会話内容を理解することが容易ではありません。「UDトーク」を導入することで、職場のコミュニケーションが一層促進され、聴覚障害のある方だけでなく、職場全体の業務効率化や生産性向上に繋がることが期待されます」と指摘。

さらに「こうしたソフト導入や研修などの一連の施策で職場における障害を理由とする差別の解消や合理的配慮の提供等への対応を行う体制を整備し、障害を有する人もそうでない人も、共に働くことができる社会の実現に努めています」と明かすのだ。

協和キリングループが実践するテクノロジーを活用した「インクルーシブな職場環境」の取り組み。今後、障害者の受け入れ体制を新たに構築する他社にとって大きな参考になりそうだ。

(取材・文/PAGEVIEW編集部)

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