【セミナーレポート】「65歳からの肺炎予防」肺炎球菌ワクチンの接種の重要性とは

 悪性新生物、心疾患、老衰、脳血管疾患に続き、日本人の死因の第5位となっている肺炎。なかでも注意を要するのが高齢者だ。2021年の人口動態統計によれば、肺炎の死亡者のうち97.9%を65歳以上の高齢者で占めている。

 2023年8月28日、MSD株式会社が都内でメディアセミナーを開催。国立病院機構東京病院 感染症科部長の永井英明先生が「人生100年時代、いま改めて65歳以上が注意しておきたい肺炎対策-Life course immunizationの中での高齢者ワクチン戦略-」と題し、高齢者の肺炎の特徴、原因、予防方法を解説した。

 近年、抗菌薬など薬の進歩と医療技術の向上によって、治療しやすくなった肺炎だが、永井先生は「高齢者にとってはいまだに怖い病気」であると指摘。慢性の心臓疾患や呼吸器系疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病などが、肺炎などの感染症にかかりやすくさせ、症状も重くなる傾向があると語る。

 また高齢者の肺炎の場合、発熱や咳、痰といった症状が乏しい傾向があり、症状が急変し治療が間に合わないケースもあると指摘する。

「健康に自信のある高齢者はワクチンを打ち控えている」

 肺炎を予防するために重要なのが、細菌やウイルスが体に入り込まないようにする「細菌予防」、規則的な生活や禁煙などの「体の抵抗力の強化」とワクチンによる「予防接種」だ。永井先生は高齢者に推奨されるワクチンとして「インフルエンザワクチン」「肺炎球菌ワクチン」「帯状疱疹ワクチン」「新型コロナワクチン」を挙げる。

 さらにメリットがあるにもかかわらず「健康に自信のある高齢者はワクチンを打ち控えている」と永井先生。定期接種となったものの高齢者による肺炎球菌ワクチンの接種率は14.0%(令和3年度)にとどまり(ただし、これらの実施率の数には、解釈に留意が必要と補足された)、接種率の向上が求められる現状を指摘した。

 超高齢社会の日本において大きな課題となっている医療リソースの不足。ワクチン接種によって高齢者のリスクを減らすことが、早急に求められている。

おすすめの記事